こんにちは、松原です。

本日は、当院で取り組んでいる内視鏡検査の感染対策をご紹介します。

 

新型コロナウイルス感染の拡大に対して、日本内視鏡学会が内視鏡検査の指針を発表しました。

不要不急を避けること、被験者の感染兆候を確認することなど、項目は多岐に渡ります。

そしてこれに伴い、健診の胃カメラなどは各施設で中止・延期されるところが増えました。

 

ではなぜコロナウイルスが内視鏡検査で感染するかを説明します。

胃カメラの際はむせこみや嘔吐反射で飛沫が飛び、感染源となります。

それに伴うエアロゾルも、感染性が否定されていないため、リスクがあります。

また大腸カメラの際は、便などにウイルスが含まれることがわかっており、感染のリスクがあります。

無症状の方であってもコロナ感染の方が一定数いるのであれば、検査をすることで検査者や介助者が飛沫を浴び、感染が広がりクラスターとなってしまう危険があるのです。

検査の時に着ているガウンやマスクが枯渇している状況では、検査自体のリスクが高いということになります。

検査の縮小は、現状では妥当な判断だったのでしょう。

 

しかし緊急事態宣言が解除されてもリスク自体はゼロにはなりませんし、検査を減らしても、それに合わせて胃カメラや大腸カメラが必要な病気が減るわけではありません。

この1ヶ月当院では、血を吐いた、下血をしたという症状で受診される方が、目に見えて増えました。

皆さん、自粛やステイホームで過剰なストレスを抱え、胃腸にかなりの負担がかかっているのかもしれません。

 

枯渇する医療用防護具とコロナ感染の危険性、一方で検査需要の間で、今後も安全に検査を続けるためにどうしたら良いか、学会の提言に止まらず自分なりに考えてきました。

そこで、当院では4月の時点から、カメラを受ける患者さんにご協力いただき、少なくとも検査時に飛沫が飛ばないよう、自作のシートをかけさせて頂くことにしました。

 

 

 

 

 

 

エアロゾルについては残念ながらクリニックレベルでは未検証ですが、飛沫についてはシートを超えて出てくることはほぼないようです。

このシートが100%の感染予防にはならないとしても、数十%の感染リスク減になればと思い、考案作成しました。

時間があったので勉強して、特許庁への実用新案出願も初体験しました。

 

科学的な検証を行なった結果、もしかしたら有効性は少ないのかもしれません。

しかしながら、コロナウイルスにいつまでも手を拱いていては、助かる病気もその機会を失ってしまう可能性があります。あの時検査を受けられていれば、進行癌にならなくて済んだのに…となっては、とても悲しいことです。

そして通常の検査が制限され続けてしまうようでは、若手医師の内視鏡研鑽の機会も奪われてしまいます。

拙い工夫ではありますが、少しでも前に進めるものであれば意味はあると思いますし、今後は必要なことを継続するための議論が求められると思っています。アイデアひとつでも、そのような議論へ繋がれば幸いです。

 

これから先も、全ての人が厳しい環境に置かれると思いますが、知恵と工夫を凝らして、建設的な議論を行い、社会を守っていきたいですね。