当院は急な腹痛で受診される方が多く、一定頻度で大腸憩室炎の方がおられます。本年「大腸憩室症ガイドライン2026」が発表されたので、あらためて憩室症について学んだことを、今回は憩室炎に絞ってまとめてみます。

憩室とは

「腸にできた小さなポケット」

大腸の壁の一部が、外側に向かってポコッと袋状に飛び出したものを「大腸憩室(だいちょうけいしつ)」と呼びます。憩室自体は病気ではなく、持っているだけなら自覚症状もないことが多いです。

大腸憩室の成人の保有率は20%前後とされており、便秘などで腸の中の圧力が上がるとできやすくなると言われてきました。ですがガイドラインによると、2010年以降の報告では、下痢・軟便傾向の方に憩室症の頻度が高いという関連が示されています。また、食事についても赤身肉や高脂肪職などが発症リスクとされてきましたが、一定した見解はないようで、本邦では喫煙と飲酒が発症リスクとされています(ただし海外では真逆の報告もあり、何ともはっきり言えなさそうですね…)。

「炎症」が起きる原因

この小さなポケット(憩室)の出口に、硬くなった便の塊(糞石)などがスポッとはまり込んでしまうことなどがきっかけとされています。

こうなると出口がふさがり、ポケットの中の圧力が高まり、壁がダメージを受けます。また逃げ場を失った憩室の中で細菌が増殖し、炎症を引き起こすことで「憩室炎」が発生します。なお憩室症の方の憩室炎発症率は、観察期間中央値7年で1~4%と言われています。

ガイドラインにも触れられていますが、憩室炎には大腸癌の関連もあるため、憩室炎の改善後には、一度大腸カメラを受けることが推奨されています。

診断と重症度

診断は、当院では主に「腹部CT検査」で診断をつけます(診察して病状を把握した上で、委託先の病院で検査を受けてきてもらいます)。

  単純性:炎症がポケットの周りだけで収まっている状態。

  複雑性:壁に穴が開いたり(穿孔)、膿が溜まったり(膿瘍)している危険な状態。

治療

基本は絶食などで「腸を休めること」と、抗生剤などで「菌を退治すること」です。

  軽症:自宅で安静にし、消化の良い食事(低残渣食)と飲み薬の抗菌薬で様子を見ます。

  中等症以上:入院して絶食し、点滴で水分と抗菌薬を投与します。

  重症:膿を出す処置(ドレナージ)や、緊急手術が必要になることもあります。

 

病気の成り立ち〜治療について簡単にまとめましたが、当院の場合は身体診察から入り、外来で対応できるのか、入院治療まで考慮するかどうかを判断しています。そこの見分けをすることがゲートキーパーとしての役割です。

今回のガイドラインで一番びっくりしたのは、複雑性ではない場合は抗生剤投与を推奨しない、という提案がされていることです。私は抗生剤信者ではないのですが、これは実際に診療をしている側からすれば、現場でその判断をするのはとても難しいと感じました。

もうひとつ勉強になったのは、憩室炎の再発予防として「ごぼう茶」がガイドラインで取り上げられていたことです。当院で治療を受けている方でも、再発を繰り返している方も一定数おられます。再発予防の有効な方法として、1日3回ごぼう茶を飲むと再発率が下がるようなので、ガイドラインからの情報提供として挙げてみました。