⚫︎ピロリ菌感染(慢性胃炎)とは

慢性胃炎とほぼ同義とされる萎縮性胃炎は、胃の粘膜に長期間にわたって炎症が生じることで、粘膜が壊されたり修復したりすることが繰り返され、しだいに胃の粘膜が薄くなった状態のことをいいます。

特にヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)によって起こった萎縮性胃炎は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がん、胃MALTリンパ腫(悪性リンパ腫の一種)、胃過形成ポリープなどの病気を起こすことが多いと知られています。

⚫︎原因

萎縮性胃炎の原因でもっとも多いのは、ピロリ菌という胃に感染する細菌です。

ピロリ菌は幼年期に衛生環境が良くなかった年代の方に感染している人が多く、上下水道の完備し生活環境が整備された現代では、ピロリ菌に感染することは少ないとされています。ピロリ菌は、ほとんどが胃酸の生産量が少ない、幼児期に感染すると言われています。先進国では、主に家族内感染であると報告されています。中でも母親から子供への感染ルートがメイン(それでも11%前後の感染率です)であることが知られています。

⚫︎症状

ピロリ菌に感染しても、必ずしも潰瘍や胃癌が発症するわけではありません。しかしピロリ菌が胃に常在する場合、慢性的な炎症を引き起こすため、胃の粘膜を守る力が弱まり、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がんの発症リスクが高くなります。ピロリ菌を除菌することで、腹部の不快な症状が改善する方もおられます。

⚫︎検査・診断

ピロリ菌の検査については、保険診療の定義上、胃カメラの診断が優先になります。胃カメラで萎縮性胃炎があり、ピロリ菌の感染が疑わしい場合に初めて、ピロリ菌の検査が保険診療で可能となります。一部健診でピロリ菌の検査を受けて来られる方もおりますが、その場合も胃カメラを受けていない場合は除菌前に胃カメラを受けていただくことになります。ごくまれに、健診のピロリ菌抗体陽性を指摘されても、胃カメラで萎縮性胃炎がなく、結果が乖離することもあるため、その場合はご相談をいただければと考えています。

ピロリ菌の検査には、下記の方法がありますが、当院では主に尿素呼気試験と血中ピロリ菌抗体を行っています。

〜胃カメラを使わない検査~

・尿素呼気試験
除菌の判定に主に使われる検査方法であり、診断薬を服用し、服用前後の呼気から診断する方法です。

・血中抗体

血液検査や尿中検査で測定し、ピロリ菌に対する抗体の有無を調べる方法です。

・便中抗原測定
便中に含まれるピロリ菌の抗原の有無を調べる方法です。

〜胃カメラを使う検査~

・培養法
胃の粘膜部分を採取し、5~7日培養して判定する方法です。

・迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌が持っているウレアーゼを利用して調べる方法です。採取した胃の粘膜を反応液に添加し、色の変化でピロリ菌の有無を判定します。

・組織鏡検法
胃の粘膜の組織を特殊な染色色素で染色し、顕微鏡でピロリ菌を探す方法です。

⚫︎治療法

ピロリ菌の治療は、主に3種類の薬(胃酸を抑える薬1種類と2種類の抗生物質)を1週間服用する「除菌治療」が一般的です。1次除菌で成功しなかった場合は、薬の種類を変えて2次除菌を行います。 

・1次除菌 

治療内容: 胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬)1種類と、2種類の抗生物質を1日2回、7日間服用します。

  1.  

成功率: 初めての除菌(1次除菌)では、約90%以上の確率で除菌に成功するといわれています。

除菌判定:薬の服用を終えてから4週間以上経った後、除菌が成功したかどうかを再度検査で確認します。

・2次除菌

治療内容: 1次除菌で失敗した場合は、抗生物質の種類を変更して再度7日間服用します。

成功率: 2次除菌まで含めると、除菌の総合的な成功率は97〜98%にのぼります。

・3次除菌以降
2回の除菌治療でも失敗した場合は、保険適用外となりますが、3次除菌を検討するケースもあります。 

【治療中の注意点】

  • 服薬の厳守: 1週間、指示された通りに薬を飲みきることが最も重要です。
  • 飲酒・喫煙を控える: 治療中の飲酒や喫煙は胃酸の分泌を促し、抗生物質の効果を弱めてしまう可能性があるため、控えましょう。
  • 副作用: 腹痛、下痢、吐き気などの副作用が出ることがあります。薬疹などのひどい副作用が出た場合は相談してください。また、除菌後に胃酸の分泌が正常に戻ることで、一時的に胸やけを感じる人もいます。 

【治療後の注意点】

  • 胃がんリスク: ピロリ菌の除菌に成功しても、胃がんのリスクがゼロになるわけではありません。定期的な胃がん検診(胃カメラ検査など)を継続することが大切です。
  • 再感染: 除菌成功後の再感染はまれですが、注意が必要です。 

⚫︎保険適用について
ピロリ菌の検査や除菌治療は、胃カメラ検査で慢性胃炎や胃潰瘍などがあると診断されれば、保険が適用されます。予防目的の場合は自費診療となることがあります。