こんにちは、松原です。

寒いですね、札幌では本格的に雪が降ってきました。

前の冬から始まった新型コロナウイルスの蔓延は、もうすぐ一年を迎えようとしています。厳しい要請が、札幌では日々追加されています。

今回は、新型コロナウイルスに関わる情勢に対する、私なりの一年の感想です。

平坦な長文なので、お時間のある方だけご覧下さい。

 

・今できる事・すべき事

新型コロナウイルスについては、わかってきた事が少しずつ増えています。

比較的安全な状況と、これはダメでしょうという状況が、はっきりしてきた気がします。 安全だと思う事は必要以上に恐れず、ダメでしょうと言う事は避ける、以前から変わっていませんが、今できる事はそれだけだと思います。 シンプルに考えると、他人にうつさないためには、三密空間でマスクなしで話す・咳をするのは避けるべきで、その行動が思いやりに繋がります。感染を避けたいのであれば、その環境を避けるのがベターですし、逆にマスクや消毒などが徹底されている環境なら、社会生活をするためにも、必要以上に恐れるべきではないとも思っています。

 

・私達医療機関を取り巻く環境(特に入り口としての役割)について

一年前と比べて、大きく変わりました。この冬に向けて、概ね予想していた通りの要請が、行政から指示されています。当院では当初から行ってきている内容でしたので、夏以降は特に変更なく診療を続けています。

医療機関の対応としては、コロナ前にフリーアクセスで幅広い症状に対応していた頃と比べて、特に都市部は大きく変化している気がします。今まで普通だった事が、どんどん難しくなってきていると感じます。応召義務も形骸化してしまいました。

科学的な答えはまだ出ていないと思いますが、この感染症を完全に防ぐ事は不可能でしょうし、どんなに気をつけていても、誰でも何処でも罹る可能性があります。生活に必要な全てを備蓄して、一人で家に籠らない限り、ゼロリスクに近づく事はありません。

当院としては、表立って発熱の方を遠ざけても、感染力が発症数日前からある状況であれば、その行動の意味は信頼の喪失以上にはならないと思ってきました。事実この一年、新型コロナウイルス感染以外の感染症の方は一定数おられ、発熱で医療機関を受診できない事の危険性は、非常に深刻なことだと感じています。

今後も不透明な情勢なので、当院も今の対応を続けられなくなる危うさはあると思っていますが、すべての対応ができないとしても、せめてかかりつけ(定義は各施設によって違いますが、当院は診療したことがある方はかかりつけです)の患者さんは、頑張って引き受けていこうと思っています。

 

・感謝すべき方々

個人的には、前線で働く保健所の方々の尽力に頭が下がります。互助会である国民皆保険は、けして患者さんと医療機関だけで成り立つものではなく、表に出ない方々の尽力があって成り立っているのだと、恥ずかしながら初めて実感しました。国からの指示に従い、前線で働く方々は感謝されるべきであり、けして責められる対象ではありません。彼等のためにも、これからも協力できる事はし続けていくつもりです。

 

・オンライン診療について

今年はオンライン元年とも言えるほど、診療にオンライン診療が普及しました。当院も定期通院の方に限って利用しています。ある程度の人間関係や、お身体のことを理解した上で行うには、大変優れたツールだと思います。しかし対面の診療と比べて、オンラインだと互いの目を見て話すことが難しく、コミュニケーションをするにはそれなりの信頼関係が必要になると感じます。いわゆる「手当て」もできないので、何かあった場合は実際に受診してもらわなければ、診療は難しいのも事実だと思います。

それを踏まえると、やはり風邪症状などの急性症状を初診で診療するには無理があると思いますし、初診のオンラインを導入するなら、何かあれば自施設内での診療を可能にしなければ、誤診が増える危険なツールなのかもしれません。

 

・今後について

報道を見ていると、感染者数や重傷者数に偏る報道が通年流され、現場の困窮逼迫を流し続けているにも関わらず、解決策と言われたワクチンも期待と不安が交錯しており、治療薬については未だ未知数です。一方で、社会生活を無視することもできません。正直、何を重視していて、何処を目指しているのかが、よく分からない状況だと思います。

これは現代社会における情報化の弊害とも思われ、必要な情報が上手に入ってこない、伝えられていない事が原因かもしれません。台湾や中国で感染を抑え込んでいる状況を見聞きすると、日本人の今までの考え方とは、対応すべき内容が違うのかもしれないと漠然と感じています。

私自身が考える事は、この不確実な新型コロナウイルスの世界へ対応するためには、必要な情報を整理してから、変えるべき事は抜本的に変えざるを得ないと思っています。昔のような『流行り風邪』では、済まされなくなっているからです。

医療に限らず、すべての事業や生活様式、人生の価値観、死生観すら、新型コロナウイルスに関わらず、今後も起こりうるバイオハザードに対処するために変更していくべきかもしれません。そのためには、各業態が独自に考えるのではなく、新たに生まれる価値観を元に、行政にその取りまとめをして頂く必要があると思っています。できればこの夏は目先の事ばかりではなく、大筋を見直す時期にしてもらいたいと思っていました。

公費負担の検査、補助金、助成金、すべて必要な事ですが、永遠にできるわけではありませんし、今を乗り越えても、私たちの子供世代への負担はどうなってしまうのか、不安が尽きません。行政は現状に真剣に向き合って、解決に近づく明確な方針を公示してもらう責があるのではないでしょうか。

今はそれを待ちながら、各自が今できる感染対策を徹底し、感染者数に一喜一憂せず、「普通のことを普通にする」ために、皆で協力していくしかないと思っています。

 

・終わりに

当院の診療もアクロバティックに変化してきましたが、全て手探りであり、皆さんに辛抱してもらう事、折り合わない事もありました。だからこそ、共感して頂き、温かいお言葉をいただく事が何より力になっています。

私達クリニックの船出は、想像もしない出来事に重なりました。だからこそ、この時期を共に乗り越えた皆さんとは、深い信頼関係を築いて年を重ねて行けると信じていますし、少なくとも私はそう接していくつもりです。この場所を、皆が思いやりを持ち合える、良い場所にしたいと思っています。

 

このコロナ禍、まだ三合目〜四合目くらいかもしれません。しかし自分が変化を受け入れる事で、以前よりも豊かな感情を得る事も出来る気がしています。

厳しい冬がやって来ますが、対立分断するのではなく、「和をもって尊しとなす」日本人らしく、皆で乗り越えて行きたいですね。