消化器内科では、「腹痛、下痢、血便」で受診される方が一定数おられます。

当院でもこれらの症状で受診される方がおられ、特にこの三つが揃った状況で受診される場合、虚血性腸炎が原因であることが多い印象です。

以前血便についてよもやま話で触れたことがありますが(血便のお話)、その後も受診される方が多い疾患ですので、一度しっかりまとめてみることにしました。

虚血性腸炎は、大腸への血流が一時的に悪くなることで腸管の粘膜に炎症や損傷が生じる病気です。突然の腹痛や血便を特徴とし、主に高齢者に多く見られるとされますが、どちらかと言えば、当院では若い世代の方が多く見られます。 

症状

症状は突然現れることが多く、前触れとなる初期症状はほとんどありません。 

  • 突然の強い腹痛: 特に左下腹部に痛みを訴えるケースが多いです。
  • 血便: 腹痛の後に、鮮血や「いちごジャム」のような暗赤色の血液が混じった便が出ることがあります。
  • 下痢: 水のような下痢を伴うことがあります。
  • その他の症状: 吐き気、嘔吐、冷や汗、微熱などが生じることもあります。

原因

多くの場合、原因を特定できないことが多いのですが、下記の病態が原因となりうるとされています。

  • 基礎疾患: 高血圧、糖尿病、脂質異常症、心血管疾患など、動脈硬化に関連する疾患を持つ方。
  • 便秘・ストレス: 近年、慢性的な便秘やストレスが原因で、比較的若い世代での発症が増えています。
  • 特定の状態: 大動脈の手術後や、血液凝固障害がある人にも発生しやすいとされています。

診断方法

臨床症状(突然の腹痛、血便)から疑われますが、確定診断には主に大腸内視鏡検査やCT検査が用いられます。 主に当院では採血検査と大腸内視鏡検査を組み合わせて診断することになります。

  • 大腸内視鏡検査: 最も重要な検査です。腸管の粘膜を直接観察し、虚血による炎症、浮腫(むくみ)、潰瘍の範囲や深さを確認できます。特徴的な所見として、粘膜が腫れて隆起する「母指圧痕像(thumb printing)」が見られることがあります。大事なこととしては、虚血性腸炎と思っていても、それ以外の疾患が隠れていることもあるので、発症後は一度大腸内視鏡検査を受けるようお勧めしています。
  • CT検査: 腹部CT検査は、腸管壁の肥厚(壁肥厚)や周囲の腹水の有無、腸管穿孔(穴が開くこと)などの重症度を評価するのに役立ちます。また、他の疾患(腸閉塞など)との鑑別にも有用です。
  • 血液検査: 白血球数やCRPといった炎症反応の上昇が見られますが、軽症型ではほとんど上昇しないこともあります。重症の場合は、乳酸値の上昇など、より深刻な虚血を示す指標が現れることがあります。

治療と管理

多くは軽症で、適切な治療により数日から1〜2週間で回復することが多いですが、重症化すると緊急手術が必要になる場合もあるため、放置せず速やかに受診していただきたいです。

基本的には外来診療で、以下の方針をとることが多いです。

  • 腸管安静: 治療の基本は、食事を制限して腸を休めることです(絶食や消化の良い食事)。少しでも食べられる、飲み物が飲めるという状況であれば、外来通院で診療できることが多いですが、水分も取れないくらい痛みなどが強い場合は、入院先をご紹介しています。
  • 食事: 回復期には、脂っこいもの、食物繊維の多いもの、香辛料などの刺激物、アルコール、カフェインは控える必要があります。
  • 重症の場合: 腸管の狭窄や壊死(えそ)が進んだ場合は、手術が必要になります。お腹を触って、怪しいなと思う状況であれば、適宜手術などが可能な施設をご紹介しています。

再発予防

一度虚血性腸炎を発症すると、再発率は6〜12%とされています。多くの方にとっては、一度きりの発症であることが多いです。再発しないためには、基礎疾患の治療(高血圧など)、便秘の改善、ストレスなど生活習慣の見直しなどが挙げられるものの、決定的な予防策はありません。無理な生活、ストレスを抱えている方に多い疾患である印象が強く、ある程度余裕を持つことが一番なのかもしれません。 

以上になりますが、特に「急な腹痛→下痢→血便」といった症状があった場合、本疾患を疑って良いと考えますので、お困りの際にはご連絡ください。